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代表理事挨拶

香川県建築設計協同組合 代表理事 挨拶

興味をいだくユダヤ人の生活規範(パート3)

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香川県建築設計協同組合
代表理事 斉 藤   孝







 私の愛読書の中の愛読書といえるものに、「タルムード」なるものがある。このタルムードというものは何ぞ?といわれるだろう、簡単に一口でいえばユダヤ民族を5000年に渡って支えたてきた生活の規範を述べている書である。
 一昨年、昨年度の本誌にも記しているのでその続々編ということになる。

ユダヤ

 東京に住んでいるユダヤ人の女性が、上野のデパートに買い物に行った。帰ってきて品物を広げると、箱の中から自分の買わなかったものが出てきた。それは指輪で、非常に高価なものだった。彼女は洋服とオーバーを買ってきただけだった。
 彼女はあまり豊ではなかったけれども、子供と二人で住んでいたので、自分の幼い息子にそのことを話した。
 するとラビは「ユダヤの伝説では、買ったものしかわれわれはとってはいけない。だからこれはあなたにかえす」と答えた。アラブ人の商人は「あなた方の神はすばらしい神に違いない」と言った。
 この話を聞いていた彼女は、それではさっそく返しに行くけれども、なんと言って返そうかと私に相談した。
  私は「その指輪はデパートのものかデパートの売り子のものかわからないけれども、もしなぜ返したのかと質問されたら、私はユダヤ人だからとだけ答えなさ い。同時に返すときには必ず息子を連れていきなさい。息子は自分の母親が正直ものだということを、「一生忘れないだろう」と言った。

罰金のルール

 あるユダヤ人の会社でユダヤ人の社員を雇っていた。ところが彼は会社の金を持ち逃げした。ユダヤ人の社長は怒って警察に届けようとした。そこで会社の幹部が私のところに来て、「どうしたらいいだろう」と相談した。
 「本当にお金を持ち逃げしたのかどうか確かめたほうがいい。もし彼が本当に持ち逃げしたとしても、警察に行って彼が起訴されれば、きっと刑務所に入らなければならない。ただ、これはユダヤのやり方ではない」と言った。
 なぜなら、彼が牢屋に入ってしまったら、あなたはお金を取り戻すことができない。ユダヤの法律では、誰かがお金を盗んだとしたら、その人は牢屋に行かずに、お金を返さなければいけない。
 そこで、彼を見つけて牢屋に入れるよりは、まずお金を戻させて、それに加えて罰金を払わせるべきだ、と言った。
 古代イスラエルでは、罰金や、お金を払わなかったり、金利を払わなかったりすると、役務で払わなければならなかった。
 最悪の場合は牢屋に入れられるが、根本的には牢屋に入ることによって問題は解決されないというのが、ユダヤ人の考え方である。

夫婦のトラブル

 一組の夫婦がトラブルを持ってやってきた。
  夫婦の問題を聞くときには、二人を同席させたままで聞くと、お互いにけんかばかりしているので、二人を分けて別々に聞かなければならない。一人ひとり分け て聞くと、互いに配偶者を大切にして、相手のことを思っていることがよくわかる。忍耐強く話を聞いて、同情心を持って当たれば、たいていの夫婦間の問題は 解決する。
 まず夫婦の話を聞き、彼の言ったことはすべて賛成し、うなずき続け、彼の言い分をすべて認めた。それから妻がやってきた。私は彼女の言い分を聞き、彼女の言うことも全部うなずいて、忍耐強く話を聞き、あなたの言い分はまったく正しいと賛成した。
  「私は全然納得いかない。あなたは夫の話を聞いたときは全部夫にうなづいて、あなたが正しいと言い、今度は妻が入ってきたら、妻の話に一々うなづいて、あ なたの言い分は全部正しいと認めた。二人とも全然違う言い分を述べているのに、どうして二人の言い分が正しいと言えるのか」といった。
 いろいろな人たちがいろいろ違う関係を持ってきた場合、あなたが正しいとか、あなたが間違っているとか、決めつけて裁いてはならない。それはいたずらにマサツを多くするだけである。この際重要なことは、両者の熱戦状態を冷やすことにあるはずだ。
 両者の言い分を認めることによって相手は冷静になり、序々に和解していくことがある。だから、この種のトラブルには、まずどんな意見でも相手の言い分を認めることが必要なのである。

衛生観念

 ユダヤ人は非常に保健衛生の観念をきびしく植え付つけられている。以下はそのいくつかの教えである。

1、 コップで水を飲むときは、使う前にゆすぎ、使ったあとでまたゆすげ
2、自分が使ったコップを洗わずに他人に渡してはいけない
3、目薬をさすよりも、朝晩目を水で洗ったほうがいい
4、 医者のいないところには住むな
5、トイレに行きたいときには一刻たりともがまんするな

ある農園

  慈善行為によってお金をどこかに献ずると、人々は一般的に自分のお金を失ったと思いがちだが、実際は違う。実際は人にお金を与えれば、それだけ入ってくる ことになる。あなた方が慈善にお金を使えば使うほど、お金はあなたのほうに戻ってくるのだという話をするとき、私は次のようなタルムードの話を引用する。
 あるところに大きな農家があった。そこの主人は、エルサレム近辺でもっとも慈善深い農夫と言われていた。毎年のようにラビたちが彼の家を訪れ、彼はラビに惜し気なく慈善を施した。
  彼は大きな農園を経営していたが、ある年、嵐のために果樹園が全滅し、疫病がはやったために、彼の飼っていた羊や牛、馬も全部死んだ。これを見た債権者た ちは彼のところに殺到し、財産を全部押さえてしまって、彼には小さな土地しか残らなかった。しかし彼は「神が与え、神がまた奪いたもうたのだから、しかた がない」と言って、平然としていた。
 その年もいつものようにラビがやってきた。
ラビたちはあれほど持っていたのに、こんなに没落してし まって、と言って同情した。農園主の妻は夫に「私たちはいつもラビたちに学校をつくったり、礼拝所を維持したり、貧しい者や年老いた者たちのために、あれ だけ献金していたのに、今年は何もあげられなかったら非常にお気の毒です」と言った。
 夫婦はラビたちを手ぶらで返すにはしのびないと思った。
 そこで、最後に残っていた小さな土地を半分売って、それでラビたちに献金をし、そのかわり残った半分の土地でもっと働いて埋め合わせをしようと思った。ラビたちは思いがけない献金をもらって非常に驚いた。
 半分残っていた土地を耕していると、農耕に使っていた牛が倒れてしまった。しかし泥にまみれた牛を掘り出していると、牛の足の下から宝物が出てきた。その宝物を売ることによって、彼らはまた、むかしどおりの農園を経営することができた。
  次のとし、またラビたちが帰ってきた。ラビはまだあの農夫が貧しい生活を続けていると思って、小さな昔の土地に行った。ところが、近所の人たちが、「い や、彼はもうここには住んでいない。向こう側のもっと大きな家に住んでいる」と言った。ラビがそこに訪ねていくと、農園主はこの一年間に自分たちに起こっ たできごとを説明し、「惜しみなく慈善を与えれば、必ずそれは戻ってくる」と言った。

生きた海

 ユダヤ人は世界中の民族の中で、もっとも慈善を重要視する民族であろう。にもかかわらず、今日ではあるユダヤ人に関しては、慈善行為を行なえとすすめるか、また他人にすすめられなければ、慈善を施さないような人も出てきた。そのとき私は次のように話した。
 イスラエルにはヨルダン川の近くに二つの大きな湖がある。一つは死海、一つはヘブライ語で「生きた海」と呼ばれる湖である。「死海」にはよそから水は入ってくるけれども、どこにも出ていかない。いっぽう、「生きた海」のほうは水が入ってくる代わりに、水が出ていく。
 慈善をするものは生きた海で、水が入ってまた出ていく。われわれは生きた海にならなければならない。



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