寄稿(2022年)

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寄稿(2022年)

私と新幹線

鹿谷 公三
コラム建築事務所

倉岡事務局長より、会誌の原稿依頼があり、題目は自由ということなので、私の仕事の「建築構造」の話にしようかとも考えたが、書く方も読む方も苦痛になると思われるのでやめた。
さて、何をと考えたが、この2年間コロナ禍のためにどこにも行っていないことに気が付いた。
さてネタが無い。65歳になった時に入った「ジパング俱楽部」の会員手帳も、この2年間真っ白である。何かわびしい気持ちになった時、ひつこいようだが昔乗った汽車の話にしようと思った。
普通の人は東京に用があるとき、飛行機で行かれる方がほとんどだと思う。私は団体旅行で組み込まれているとき以外は乗らない。
そんな訳で、今まで他の人よりたくさん乗ったと思われる新幹線のことを書いてみる。
但し、独断と思い込みが、かなり入っているのでご注意を。

0系電車

0系電車は私が一番慣れ親しんだ車両である。丸みを帯びた,ダンゴ鼻の形状は、安定の形だと思う。東海道・山陽新幹線で44年間にわたって運用された。有名な話であるが、車体の青・白は、タバコの「ハイライト」の色から発想したものだそうだ。0系は大学時代、新人の社会人時代(東京にある事務所で5年間修業 した)帰省時によく乗った。新社会人時代、休 暇が短かった為、東京を最終の「ひかり」で出 て、新大阪で在来線の「鷲羽」に乗り換え、朝 4時ごろ宇高連絡船で帰っていた。懐かしい思 い出だ。また、O 系運用の最後は、山陽新幹線 「こだま」として使用され、2列+2列のグリー ン車のような座席で、大阪にゆったり行きたい 時に乗る貴重な電車であった。

100系電車

100系電車は、先頭車両が「シャークノーズ」サメの鼻とも言われる。0系の次に出てきた電車で、2階建車両を初めて新幹線に採用したことで有名である。2階建車両はグリーン車に使用され、私も乗ってみたことがあるが、近鉄のビスタカーの方が精錬されているようにその時は思えた。この2階建車両のグリーン車は運用期間26年で最後まで残らなかったと思う。100系は私が東京で、日本防災協会や文教施設協会の講習会がある時よく利用した。最後は0系電車と共に、山陽新幹線の「こだま」に使用されていた。

300系電車

300系電車は新幹線の歴史を変えた車両で、「のぞみ」専用で時速270㎞走行を行う車両として投入された。また、名古屋に停車しない「名古屋飛ばし」の車両として注目された。初めて東京―岡山間を3時間半で結んだ車両であった。ただ、20年間の短い運用で、私もあんまり印象に残っていない。初乗車は家族で九州のハウステンボスに行った時、岡山―博多間だったような気がする。何か新幹線車両の中で、性能は優秀なのに、気の毒な車両に思われて仕方がないのである。

500系電車

500系電車は1997年に、山陽新幹線で運転を始めた。私が初めて乗ったのは事務所協会の用事で広島県の事務所協会に行くため、当時の三島会長、現在の中村賢治会長と広島―岡山間を同乗した。当然ノンストップなので所要時間は35分、弁当をゆっくり食べられなかったことを覚えている。この車両は山陽新幹線で初めて時速300㎞で運転され、日本最速の営業運転用車両である。ただし、円筒形の形状で容量が小さく、車内および座席が少々窮屈なように感じた。現在は山陽新幹線内で一日数本しか走っておらず、近々無くなりそうな雰囲気なので、早くまた乗りにいかなければならないと思っている。

700系電車

700系電車は今の東海道・山陽新幹線を代表 する車両で、21年間で一番多く使われた。後 のN700A,N700S, と近代化する車両の礎となっ た優秀な車両である。私は今は煙草を吸わない が、頑固に45年間たしなんでいた。JR のすべ ての在来線が禁煙となっても、新幹線の700系 には数両喫煙車があった。その車両を利用する 人はすべて喫煙者であるから、岡山―新大阪間の乗車1時間弱で、服と髪が燻されて家人に苦情を言われたことが思い出される。700系は最後まで喫煙車両を残してくれた私にとっては、ありがたい電車であった。

N700系電車

N700系電車は現在東海道・山陽新幹線の中 心となっている車両で、N700A とN700S が ある。2007年より運用を開始し、今一番数多 く走っている。車両は全席禁煙で、3ヶ所喫煙 ルームがある。私が喫煙者の頃は、喫煙ルーム と座席とを何度も往復した。他の在来線がすべ て禁煙であったのでここが唯一吸えるスペースであった。岡山―新大阪間の指定席を取ったのに、ほとんど喫煙ルームで過ごしたことが思い出される。

800系電車

800系電車はJR 九州が保有する唯一の新幹 線車両で、内装を有名な水戸岡鋭治が手掛けて いる。水戸岡はJR 九州の超豪華な「ななつ星」 のプロデューサーであり、車両の座席や壁に木 を造作したものを用いており、落ち着いたデザ インである。この電車で思い出すのは、2016 年4月、香川県建築士会より熊本地震の被災地 に応急危険度判定士として派遣されることになり、自前のマイクロバスで熊本入りするのでは約束の時間に間に合わないので、前日まで不通の当日再開した九州新幹線、筑後舟小屋より熊本までの3区間、乗車したことが思い出される。非常時、急いでいかなければならないときに、時刻表通りに動いてくれるありがたさを感じた。

E5系電車

E 5系、H 5系電車はJR 東日本、JR 北海道 が保有する車両である。当然E 5が東日本、H5が北海道で、車体の色と内装に違いがある。国内初の時速320㎞運転で、国内最高速度を出す新幹線である。2019年の建築士会全国大会が函館で開催された時、旅行初日の夜自由行動となり、函館山の夜景や,街の海鮮料理に行く人がほとんどでしたが、私はこの機会を逃したら乗るチャンスが無くなると思い、新函館北斗―新青森間往復乗車した。夜で、しかも青函トンネル内は走行速度160㎞となっており、高速鉄道の醍醐味を味わうことは出来なかったが、行きはE 5系、帰りはH 5系の車両に乗れて 満足できた。 このように振り返ってみればいろいろな車両 に乗ってきたなと、感慨深いものがある。この 先元気なうちに、長崎新幹線、北陸、北海道新 幹線の延長区間、リニア中央新幹線と楽しみが まだ数々ある。これを乗ることを目標にして、 気軽に旅行ができる時代が来ることを願って筆 をおく。