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コロナ禍の活動報告

大北 和則
(有)住空間設計

最近まで騒がれていたコロナウィルスによる影響を受けながら、設計事務所経営を真面目に考えたことを皆様に聞いていただきたく書いてみました。かろうじて乗り越えては見たものの、現在の設計業務は大きな影響を受け、ずたずたになった事務所の再建途上というのが現状ですので皆さんの参考になるかどうかは分かりません。

今回のコロナ禍において、2008 年に世界的に吹き荒れた、リーマンショック時の「経営の危機」をまたしても味わうことになるとは、最初思っていませんでした。それは一つの「金融危機」であり、私は時間が過ぎれば何とかなる位に思っていました。当時は従業員一人と、私の2人だけの事務所でしたが、仕事自体は半年間全く無く、下請け家業の辛さを感じたものの、自分の貯えで何とかなるという楽天的な考えに精神上助けられ、倒産という恐怖感はそんなに無かったように思います。ところが今回のコロナ禍においては、ただならぬ雰囲気を最初から感じており、まず会社をどうやって守るかを本能的に考えていました。

ちょうど中国の武漢でコロナウィルスの症状が出て、世界中で話題になっていた2019 年の秋、私はベトナムのダナンという都市に仕事で滞在していました。日本に帰れるんでしょうかという現地スタッフの言葉に言われぬ恐怖を感じ、国境封鎖も流布されていたこともあって、それまで味わったことの無い恐怖感を感じていました。

事務所経営について、それまでにない覚悟を決めたのが翌年の4月ごろですから、「動物的感」というものは存在するんですね。その時点で、私の設計事務所の従業員5名と関連会社の従業員2名を整理し、2か所の事業所を1か所にまとめ固定費を切り詰め、私と残った2名で運営していこうと心に決めました。「えげつない人」やと他人から言われたのを覚えています。結論を言えば、辞めて行った人のその後を見ると早期決断できて良かったと思っています。コロナ禍における反省点は言い尽くせないほどありますが、そうは言っても希望の無い行動は、ますます業績が落ち込むと思い、前向きにやっていこうと考えるのが精いっぱいでした。その時にどんなことを経験し考えたのかをこれから述べたいと思います。

1.コロナ禍で傷ついた会社の経営の立て直し

まず第一に考えたことが、資金管理と業務の効率化において、収入減少を乗り越えるための経費削減や効率的なプロジェクト管理が必要であり取り組んだということです。要は「お金」を徹底的に管理し、バランスシートを完璧に把握するということです。それまでは、どんぶり勘定が常だったのが、このことによってほんの少しだけ未来が見えてきたのを覚えています。

次に、新たなビジネスモデルの構築を行い、オンラインプレゼンスやデジタルマーケティングを活用し、新たなクライアントを獲得する方法を検討するということでした。今では非常に遠隔地の仕事をやらせていただいていますが、コロナ禍が無かったら思いもつかない現在の業務形態となっています。これは今後も伸ばしてゆきたいと思ってます。

2.コロナ禍後の建築設計の仕事を考える

何とか動き出した再始動、コロナ禍後においては柔軟性と適応力が求められる世界になると思っています。建築のプロは新たなニーズや規制に適応できる能力を今のうちに鍛えておくべきです。それは業界の枠を超え勉強するという姿勢だと思っています。現在私は、設計業のほかに宿泊サービス業の知識を身に着けるため活動しています。これは、建築だけではなく、旅館業の知識を深く得ることが、自分の今後の行動に必ず役立つと思っているからです。また、今後環境に配慮した設計、例えば持続可能性やエネルギー効率を重視した設計が求められるようになってきています。最近の建築関係法規の変遷には著しいものがあり、その制度を理解し使いこなす努力をしなくてはなりません。

前述したように、今後設計者は、リモートワークの活用に関し遠隔で協力し、プロジェクトを進めるスキルを身につける必要があります。これにはデータ管理をいかに効率的にできるかが決め手になると思っています。

また、設計業務の中でAIをどんどん取り入れるべきだと考えます。例えば階層的になっている関連法律を調べるときとか、海外の建築に関する法律をAIを利用し調査することができます。正確で、情緒的な翻訳もできるので、アプリを利用することによって同時通訳的な業務をこなしてくれます。ボーダーレスな世界には非常に有用なシステムであると思っています。

3.心の時代と自己肯定感の活用

最後は抽象的なことですが、自己肯定感を高めることによって自信を持ち、自分の能力を肯定的に評価することで、建築設計の仕事に取り組む姿勢を強化するということです。心の時代においては、人々とのつながりや共感が重要です。自己肯定感を持ちながら他者との協力を大切にすることで、目的をより円滑に行うことができるようになると思っています。

なかなかまとめきれず申し訳ありません。骨子は以上です。まだまだ志半ばですが、地道に頑張っていこうと思います。そこそこエエ歳なので年寄りの冷や水にならないようにやっていきます。