神余 智夫
(株)清和設計事務所
附属坂出小学校は、平成24年度に創立100周年を迎えました。その記念事業の航空写真撮影時に、PTAで校舎にリボンをかけるスクールデコレーションという事業を実施しました。
大きな記念の年に、何か子供たちへのインパクトがあり、かつ、メッセージ性のある事業を模索していました。そして、リボン的なものを装飾してはどうかというアイデアからスタートしました。
設置から4カ月ほど前、どのようなデコレーションをするのか、保護者によるワークショップを実施しました。多くの保護者から盛りだくさんの案が出ましたが、最終的に大きなリボンに集中しようということになりました。
そして、リーダーを務めた保護者の方がリボンの試作の模型を作り、全体の設計をどのようにするかを考えました。8mものリボンは、布地自体を補強材で強度を高めたり、かなりの部分を室内作業で進めるために、屋上に事前に設置しておく土台と、布地を取り付けている土台を分割して設計することにしました。また、布地の土台は、教室の扉から出すことのできる大きさで19パーツに分割して設計を行いました。
部分的な試作を積み重ね、全体の計画が見えてきたところで、本格的な製作に取り掛かりました。保護者に協力を呼び掛けたところ、平日にもかかわらず多い時には80人以上もの方が集まり楽しく作業を行いました。150mもの布地に補強材のアイロン掛けをしたり、家庭科室でミシン作業をしたりと、子供たちも保護者が作業する光景を不思議そうに見ていました。
また、土日を利用して、お父さん方にも協力してもらい、土台の大工仕事や、曲線用の番線の編み込みを行いました。
パーツが完成したところで、室内での仮組みを行いました。広めの教室を借りていたのですが、あまりもの大きさに全体像が見えづらいほどでした。特に結び目のところの表現はとても難しい作業になりました。
また、リボン以外にも窓周りや屋上に風船で飾ったり、100周年記念ロゴを大きく飾ることも計画しました。またまた保護者が80人近く集まり作業を行いました。学校のいたるところで保護者が作業をしている状況でした。
設置本番の2日前の日曜日を利用し、1段目の土台製作と、2段目の土台パーツの運搬、仮組みを行いました。屋上の防水の養生から、足場の設置、材料の調達運搬など、工事現場並みの大作業となりました。
撮影当日は、早朝から組み立て作業、リボンの最終製作と風船などの設置を行いました。平日にもかかわらず120名の保護者が集結し、多くの持ち場に分かれて作業を行いました。そして、11時30分の撮影のぎりぎりまで、リボンの微妙なふくらみの調整や、帯の垂れる角度の微調整の作業を進め、ついに完成することができました。
空撮のセスナやNHKの取材ヘリが小学校の上空を旋回する中、撮影の瞬間を子供たち、先生方、保護者が固唾を飲んで待っています。しばらくたって教頭先生から撮影終了の号令がかかり、拍手と歓声が沸き起こりました。そして、保護者の方々も涙を流しながら成功を喜びました。
延べ1000人もの保護者の労力によるプロジェクトでした。5分間のNHKの特集ニュース放映の直後、私が子供の頃の複数の恩師から電話があり、「感極まってニュースを見たよ、ありがとう」と言っていただきました。
これまで小学校を支えてくれた方々への" 感謝" と、今を支える人たちの" 絆" をメッセージすることができ、子供たちの心に深く刻まれた事業になりました。 多くの人たちの様々な知恵や経験や情熱と、建築士のちょっとしたサポートが実を結んだことで、大きな感動を実現することができた貴重な成功事例となったと思います。